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誰もが
人との関わりを見失った時
孤独感に襲われる。
その孤独感は
無気力を招き、自分が誰かさえもわからなくなる。
目の前にいる貴方を
必要としている人さえ見えなくなる。
誰もが、いつか起こりうるそんな瞬間
貴方の心は”闇”に打ち勝てるだろうか?
闇の手招きに身をゆだねてしまわないだろうか?
この世に生きる意味を見出せるだろうか?
実は
意味など見出せる人は少ない
とても奥深い、人の関わりの大切な意味など
その瞬間だけでは見つけ出せない
過去と未来をつなぐ今を見つめなければ・・・
今だけに囚われている人
過去に囚われている人
未来に囚われている人
その逆で
その全てから遠ざかり逃げている人もいる
本当の答えは何処なのだろうか?
************
どれくらいの時間
この男性は歩き続けているのだろうか
雑踏の中を
何かを見つめる訳でもなく…無表情で
肩の力を落としてただ歩く
通りかかった人の流れに押し流されて
すれ違う人に肩がぶつかっても
感情が揺れることさえないこの男性は
今まさに人生の道を迷いさまよっている。
険しい山では、方向もわからないままただ目的も無く
歩いている人がいる
日差しは地面には届かない
湿った草木をかきわけ
ひたすら歩きさまよう人が・・・
涙を流す感情も
怒りも
恐怖すら無くなって
ただ引き込まれるように
人生を終わりだと思いこみ
闇の手招きの道へ誘われてゆく
心の終わりなど何処にも無いのに・・・
※
どれだけ都会の雑踏を歩いていたのだろう
その男性は、今を生きている人とは明らかに違う空気をかもし出している。
まるで自分が空気にでもなったかのように彼は存在している。
町はどんどん暗くなり人通りが少なくなってゆく
男は歩き疲れていることすらわからない
気がつけば雨が・・・
どんどん気分は落ちてゆく
運命は自分を本気で見捨ててしまったようにも感じる
何もかも終わりへと導いているようだ
そんな気持ちが包み込んでゆく
小雨の中
濡れたベンチで男は、雨の音を聞きながら、座ったまま動かなくなった。
まるでこの一瞬でさえ試されているかのような・・・
この寒空の雨をどう感じるのかを・・・
寒さを逃れて帰ろうとするのか?
雨を避けて帰ろうとするのか?
帰る場所へ導くきっかけは人それぞれなのかもしれない
しかしこの男性は違っていた。
※
そして…
何処かの駅のホームでは
何本もの電車を見過ごしてたたずむ女性がいる
彼女の耳には終電のアナウンスが聞こえていた。
今夜はいやに人が多い
終電で帰る人が行き来している
どれだけの人が彼女の傍を行き来したのだろう。
それでも誰もそんな女性を気に掛ける人はいない
誰もが自分の人生の道に没頭していた。
他人の道など興味が無い
例えその人が道を切断しょうとしていても・・・
彼女はその最終電車の後方へと引き込まれるかのようにゆっくりと歩いていった。
人がいつもより多いことが何かのサインだったことを彼女は知らない
通常の引き止めるサインでは彼女には通じないのだ。
しかしこの女性を突き動かしたものは通常のものではなかった。
※
それぞれの人生を終止符へと
手招きしているパワーはここにも存在していた。
雨が降り始めていたことすら気がつかないまま
森の中をさまよう人
時折大粒のしずくが落ち葉に落ちる音が聞こえる。
全てを雨で洗い流すような、音すら聞こえない空間
陽は落ちてゆき
暗がりの中
大木の下で座り込んだままの男性
雨などどうでもいい
闇など何も怖くない
もうどうでもいいと目を閉じた。
寒さが骨身にしみてくる
その震えも眠りに変わった
その人はまるで世間からの落ち葉のようにここにたどり着いた。
風に流され終焉をこの大木の下で
そう選択した瞬間だった。
全身の力が抜けて眠りに入り
どれだ時間が経ったのだろう
「パキッ!」
激しい音で目が覚めた。
現実に引き戻されたのだ。
気がついたとき目を見開いていた。
目を開いても薄暗く何も見えない中
力が抜けていた全身が
疑問と恐怖に包まれていた。
恐怖は人を動かす。
男は走り出した。
あても無く
気力が無かったはずなのに・・・
目的も失って終わりにするはずなのに・・・
どれだけ走ったのだろう
熱くなった体からは湯気が立つほどだった。
目指すものは小さな光だった。
気がつけば
小さな山小屋にたどり着いた。
扉を開けると・・・
そこにはずぶぬれの男性がひとり
驚いたようにこちらを見ていた。
言葉は要らなかった。
同じ事をしてここにたどり着いたのだとすぐに感じ取れた。
しばらく無言だった二人は
火をおこして何時間も語り合っていた。
そこは避難所として使われる場所で
時に命を救う場所と呼ばれる無人小屋だった。
本当の命の恩人は
恐怖心だったのかもしれない。
恐怖心が人を導くことも時にはある。
※
その頃 小さな公園のベンチの下から
か細い音が耳に入って男性が覗き込んでいた。
小さな子猫が全身ぬれたまま震えている。
男性も濡れている。
子猫を抱きかかえると
まるで自分自身を見ているかのように涙が溢れてきた。
感情は捨ててしまったはずなのに・・・
「おうちへ帰ろうか。」
震える子猫を抱きかかえると
まるで大きな目的を見つけたかのように
その男性は足早に公園を後にした。
彼に生きる目的を見つけさせたのは
暗がりや雨なんかではなかった。
自分と同じ怯えた小さな存在だったのかもしれない。
自分を必要としている子猫だったのかもしれない。
※
最終電車のアナウンスが流れ
女性は静かに歩き出した。
静かに歩くその反対側から
女性に激しくぶつかる男性が・・・
酒臭く酔っ払っている男性
最終電車が入ってくる瞬間に転んでしまい
女性はひざの痛みで我に返った。
その瞬間電車が入ってきて
女性の髪を風がなびかせていた。
ほんの一瞬の出来事だった。
男性は何度も女性に謝っている。
しかし彼女は動けなかった。
座り込んだまま涙が溢れてきた。
なぜだか笑いも同時に込みあげてきて体中が熱く感じる。
酔った男性は座り込んだ女性を放置できず
いつまでも謝っている。
泣き笑いする女性を放置など出来ない。
最終電車はそんな二人を後にして消えていった。
静かなホームは
男性の謝罪の声がいつまでも響いていた。
週末の終電のあとは
早朝の電車まで時間をつぶすためにファミレスが定番だ。
その後 謝罪と共にその男性は酔いを醒ます為にもファミレスでその女性と時間を共に過すのだった。
彼女を救ったのは普通の人ではない
酔っ払いという普段は厄介な存在が
彼女の時間を共有する必要不可欠な存在になっていた。
人生にはいろんな瞬間がある
その瞬間、心を響かせる”変化”はその瞬間に起きる偶然。
その偶然は何処からやってくるのだろう?