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「ピッ ピッ ピッ ピッ …」
規則正しい心電計の音が病室に響き渡っている。
さっきまでの騒がしい部屋の様子も落ち着いて
今は、家族と親しい親戚が集まって、
年老いたおばあさんの傍で心配そうに見守っていた。
ベットに横たわっているのは
数時間前から昏睡状態のおばあさん。
真っ白なシーツに包まれて眠ったように横になっている。
病状が悪化して昏睡状態になり
病院側からの緊急連絡があり家族が集まっていた。
孫達も集まり心配そうにおばあさんを見守っている。
もうすぐ7歳になる孫、ミクが心配そうに隣で見つめている
まだ背が低いからかおばあさんの顔がより近くに感じられる。
その後ろにお母さんとお父さん
そして10歳年上の兄、ユウキ
ユウキは、授業中に先生から突然呼び出されて
授業を切り上げてここに駆けつけて来た。
ミクはいつもおばあさんに遊んでもらっていた。
話し相手はおばあさんだった。
どうやらミクはおばあさんが普通の病気だと思っている。
ただ今は眠っているだけだと…
おばあさんの様子は安定していて呼吸も静かだった
誰の目にも眠っているように見えるほど穏やかだった。
廊下では親戚がいつも付き添っていたおじいさんに様子を聞いていた。
安定しているように見えて少しほっとして
待合室で休憩している様子だ。
病室には家族4人と点滴の様子を見に来た看護婦さんがいた。
すると突然
ミクが握り締めた手に反応が…
昏睡状態だったはずのおばあさんは
静かに目を覚ました。
何も無かったかのように…
ミクがとっさに声を出した
「おばぁちゃん。おばぁちゃん… 大丈夫?」
その声に、背中を押されるように両親も慌てて声をかける。
「おかあさん!しっかりしてください!」
ユウキも言葉にならずただ見つめていた。
おばあさんは
ゆっくりと目を開けると…
「あら!皆集合かい?心配かけてすまないねぇ」
いつもより声に力が感じられないものの
意識もしっかりとしていて
昏睡状態だったという現実は
何かの冗談かと思えるほどに目覚めていた。
点滴を確認していた看護婦さんが
意識を取り戻したおばあさんを見て驚いたように
「先生を呼んできますからね!」
と足早に部屋を出て行った。
いつも傍で看病してくれていたおじいさんも
看護婦さんに呼ばれて
慌てて病室に駆け込んできた。
おじいさんは、部屋に入るなり
おばあさんの右手を握り締め
「気分はどうだい?」と優しく話しかける。
右手は孫のミクとおじいさんが強く握り締めていた。
おじいさんは涙をこらえつつ
「もう会えないかと思ったじゃないか!」と
声を震わせながら手を握り締め
おばあさんを見つめていた。
おばあさんはいつものように穏やかに語りはじめた。
その声は、心に直接やわらかく触れてくるほど穏やかだった。
「心配かけてごめんなさいね。
もう一度貴方たちに会いたくてね
強く願ったら…
帰った来れたみたいなんだよ」
「皆、聞いてちょうだい」
5人は静かに何も言わないまま黙って聞いていた。
ユウキも何も言わず涙をこらえながら聞いていた。
「どうやら私には時間が来たようなの
それはわかるわね」
「ただ、言いたいのは
いつまでも悲しまないで欲しいの
私はもと居た場所に帰るだけで
いなくなってしまうわけではないのよ」
「それを伝えたくて…」
「ミクちゃん。わからないことがあればお兄ちゃんに聞きなさいね。
お兄ちゃんは全て知っているからね」
おばあさんは優しくミクを見つめ笑顔で語っていた。
時折おばあさんはユウキの目を見ながら…
目で合図を送っているようだった。
「おじいさん。私はその時を上で待っていますからね。
あなたが人生を全うするその日まで…
いつまでも悲しまないでくださいね。
私がいなくなるんじゃなくて いつも見守っているから。。。
後はよろしくね。」
その瞬間…
おばあさんの右手の力が抜けてゆくのをミクとおじいさんは感じ取っていた。
同時におじいさんは「おばあさん!」と力なく呼びかけ
ミクは「だめ~!」と叫びながら泣き出した。
それと同時におばあさんの左手が宙にのびていた。
点滴が繋がっているその手が何かをつかむように…
「お迎えが来たみたいだよ。
あり。。が・とう。。。。。」
同時に力が抜けたように両手が落ちた。
そして、ベットに全身が沈み込んだ。
一気に病室は慌しく看護婦と先生が決められた手順のように
おばあさんの瞳孔と心拍数を調べる。
一瞬のうちに部屋は悲しみに包まれた。
ユウキはそこにたたずみながら
ただ流れる涙をぬぐいもしないでおばあさんを見つめていた。
でも、彼には全てが見えていた。
うっすらとしか見えなかったけど確かに見えていた。
おばあさんの意識が戻る瞬間
白い光がおばあさんの中に入るのを…
そして最後に左手を宙に差し出したその時
光が強くなって
もう一つの優しい姿が手を伸ばしていたことを…
その手の助けでおばあさんが身体から抜け出したことを…
そして今も…
おばあさんはここにいる。
永遠に眠った自分の姿を横から見つめて立っている。
別れを告げるように…
その眠りについた自分の姿を見つめながら
その一生を振り返るように…
何を想っているのだろう?
と…その瞬間
おばあさんは自分の存在を見つめるユウキの視線に気がついた。
目が合うとおばあさんは
笑顔で軽くうなずき光が強くなり消えていった。
言葉はなかった。
でも…
なぜか全てが分かった気がした。
「後はたのんだよ」
そんなメッセージがユウキの心にしみ込んだ。
あの、ミクに言った言葉の意味がその瞬間
全て理解できた。
「お兄ちゃんは全て知っているからね」
今7歳のミクは死の意味がわからないだろう。
悲しんでしまうかもしれない。
聞かれたら、自分は今ここで見ていたことを
答えてあげればいい
いつかミクから聞かれるその日に…全てを…
ユウキは別れの悲しさではなく
一つの役目を終えた存在として
おばあさんの死を受け入れていた。
「お疲れ様」
と心で告げていた。
誰にも信じてもらえなくていい。
おばあちゃんは知っていたのだから…
不思議な世界の存在の姿が、自分には見えることを…
何故か…
悲しみを受け入れて、現実を理解すると
心のどこかにいつも隠れ潜んでいた孤独感が
どんどん消えて行くような感覚がした。
自分の迷いが、確信へどんどんと繋がってゆくのがわかった。
自分の存在を今見つめ始めている。
自分の役目?
まずは、愛する家族とミクの悲しみを見守らないと…
「ミク!おばあちゃんと一緒にまずおうちに帰ろうね」
ミクの手を強く握り締めたユウキの手は
おばあさんに代わる、暖かくて頼もしい手に変わっていた。
その頃 おばあさんは…
悲しむ家族の様子を感じ見つめている。
とても客観的に…
光の先のどこかで
人の心を感じ取りながら…
心から悲しんでいる様子は
ここにあった家族関係の素晴らしさを実感できた。
現実世界のリアルな体験の記憶は走馬灯のように浮かんでは消えてゆく。
そして、それぞれのシーンから沢山の愛の学びが得られる。
おばあさんは、その深くて真実溢れる愛を礎に
次の人生の準備を始めている。
そして、今度は何を体験して感じたいのかを見つけ始めている。
*********
現実世界(物質世界)では誕生があり最後は死がやって来ます。
どんな死を迎え、その時誰が傍にいるのか?
最後の幸せは 愛するものに囲まれてこそ。
自分の人生を巻き戻して見つめなおすことが出来る
最後の仕事…
人生は誕生があって終わりがあるではなく
人生は誕生
そして
新たな始まり。
人生は
永遠に続く
リアルな現実世界で
形の無い愛を見出すもの…
最期の瞬間に傍に居る愛は
その人の人生が育んできた愛の姿。
人は、もしかすると
その愛の姿を見つめる瞬間の為に誕生するのかもしれない。
その最後の一瞬だけのために…
「体験」と言う学びとして…